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「○○さん」と呼ばれたとき、どう感じますか。

「距離がある感じで寂しい」? それとも「敬われている感じ」? この「さん」呼び、ふと考えると、すごく深みのある呼び方の気がする。

たとえば、先日、日本アカデミー賞の最優秀監督賞・作品賞を受賞した『フラガール』に主演した松雪泰子。まるでアグネス・チャンみたいに、それが名前の一部のように、誰もが「松雪さん」と呼ぶ。井筒監督までも、本人を前にするでもなく、映画を鑑賞した後のコメントとして「松雪さん」と普通に言っていた。

この呼び名はかつて、何かのCM出演時のもので、そのまま世間に浸透したような気がするのだけど、公の人なのに「さん」呼びとは、特異なポジションである。

『フラガール』では、立ち姿だけでも説得力のある美しさだったが、エンドロールで専属ヘアメイク1名と専属スタイリスト2名がついていることを知り、妙に納得だった。こうした徹底した「品質管理」が、圧倒的な美しさへの畏怖もこめて、「さん」呼びさせるのだろうか。

でも、「さん」呼びは、畏怖・畏敬ばかりではない。他にどんなケースがあるかを考えてみた。
まず思いついたのが、「マッチさん」。これはジャニーズの後輩たちが、テレビでそう呼ぶことに、一般人も影響されたものだろう。
だが、ずいぶん年下でも、「ヒガシくん(東山)」「木村くん(キムタク)」と呼ぶジャニーズ内ルールにおいて、明らかに「マッチさん」は異質だ。そういえば、「ジャニーさん」も、さん呼びか。
これは、共に「エライ人なのに、愛称のせいで馴れ馴れしくなっちゃう」ことへの抵抗としての「さん」だろうか。「マッチ」「ジャニー」でいったん身近に落としたものを、「さん」で上げる方法の気がする。

続いて、スポーツ界では「王さん」。長嶋茂雄の「ミスター」はアイドル的呼称だけど、王さんは、きちんと大人の人として、ちょっと距離感がありつつ、敬意のある「さん」呼びに思える。さすがに面と向かって王さんに、「ワンちゃん」と言える人は、ほとんどいないはずだ。

「所さん」。番組名に冠してあったのが原因だろうが、ほのぼのテイストで、身近っぽさのある年長者としての「さん」呼びだろうか。最近は、タモリもかわいげのある無責任なじいちゃんキャラとして、遠くて近い「タモさん」になっているし。

思えば、自分の場合も、もっと仲良くなろうとする相手には、距離を縮めるために「○○ちゃん」と呼ぶか、ニックネームで呼ぶことがあるが、それをとびこして、昔からの友人などは、気恥ずかしさも手伝って、あえて他人行儀に距離を置いて「さん」呼びしている。
可愛さ半分、照れやからかい半分で、6歳の娘も、姪も甥も、ペットの金魚も、やっぱりときどき「さん」呼び。

そう。「さん」呼びには、畏敬や憧れがある半面、親しみや照れもある、遠すぎも近すぎもしない不思議な距離感があるように思うのだ。

「さん」呼びって、そう悪いもんでもないと思いませんか。
(田幸和歌子)

http://www.excite.co.jp/News/bit/00091172078097.html
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